契約書トリビア:署名と印鑑ではどちらに法的証明力がある?

 契約書は一般的に「署名」と「捺印」がセットで行われます。それでは署名かハンコ、どちらかしか相手に証拠を契約書に残してもらえない場合があったとして、貴方はどちらを優先しますか?更に印鑑はデキる営業マンとデキない営業マンを分ける鏡とも言われます。どのような場面で、その境界が判明するのでしょうか?契約書の署名と印鑑にまつわるトリビアをご紹介します。

意外!契約書の証明力は署名が印鑑に優先する


 契約書などに署名・押印するとき、一般的に考えられている「書面の法的な証明力」で優先順位があることをご存じですか?

 実は契約書の法的な証明力は、
  • 1:署名と捺印
  • 2:署名のみ
  • 3:記名(スタンプ印)と押印
  • 4:記名(印字)と押印
 の順に証明力が高いとされています。

 よく契約書に不備があると会社で指摘しがちなのは、「署名のみ」の場合です。

 「印鑑ないとダメじゃないかよ。印鑑押してもらいに、もう一回相手先のところ行けよ!」と言われる社長さん、いらっしゃいませんか?

 署名は「自署」ですから、本人の意思に基づいて作成された書面であるとして高い証明力があるのです。

営業マンなら印鑑は印影に重みがあるものを!


 契約書への署名・捺印は、「署名捺印」・「記名押印」のように表現することが多いですが、これはどんな表現を利用していただいても構いません。

 押印・捺印・押捺の表現自体には特に大きな違いはありません。

 ただし押捺された印鑑は、その印鑑の重要度(保管・管理、押捺権限の程度など)により証明力が高くなります。

 印字された名前の横に押された印がシャチハタ(誰でも手に入れられる)では、信用されにくいのが現実です。

 私が、住宅メーカーで営業統轄本部に属し法務担当も兼務していた当時のことです。

 個人のお客さま(施主さま)と契約を締結する場合は、署名と認印をいただければ契約書として問題はありませんでした。

 しかし成績の芳しくない営業マンは、「三文判」でも契約して来ましたが、トップクラスの営業マンは、認印でも「印影に重みのある印鑑」で契約して来る傾向がありました。

 トップセールスマンいわく、お客さまが「認印でも良いですか?」と仰った場合、お持ちの認印を見せていただき、その中から「建物建築請負契約書」に相応しい印影の認印を選んで、押してもらいます、と。

 一生に一度あるかないかの重要契約を三文判でも構わないと言う営業マンと、せめてこれくらいの印鑑でなければ・・・と契約の重要性を伝え、「お客さまは今そんな契約をされるようなお方なのですよ」と暗に敬意を表す営業マン。

 貴方はどちらを選びますか?

 印鑑ひとつですが、その営業姿勢が「信頼」につながっていたようですね。

印鑑の使い方一つで貴方の信用力は上がります


 いかがだったでしょうか?

 本日は、契約書の署名と印鑑に関する、ちょっとしたトリビアをご紹介させていただきました。

 たかが三文判でも 発生する法的効力が同じなら その文書に相応しい印鑑を使いましょう!

 契約締結の際は、印鑑の使い方ひとつで、文書の信用力だけでなく、あなたの信用力も上がるのです!(執筆者:行政書士 泉つかさ法務事務所)

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