養育費の請求は誰の権利?支払いや受け取りに増減はあるの?

 子供が生まれた後に夫婦が別れる時、大きな問題として噴出するのが「養育費」の問題です。そこで本日は、養育費の権利は誰に帰属するのか?支払いや受け取りに増減はあるのか?という、養育費の2つの問題について触れてみたいと思います。支払側が養育費の増額に備えて打っておくべき事前策もご紹介します。

子供のいる夫婦の離婚では養育費が大問題に


 人生には出会いもあれば、別れもあります。夫婦の間で「別れ」といえば、あまり考えたくありませんが、離婚というケースがあります。

 子供が生まれた後に夫婦が別れる時、大きな問題として噴出するのが「養育費」の問題です。
 
 離婚しようとする夫婦の間に「未成年の」子供がいる場合は、夫婦のどちらかが子の「親権者」にならなければなりません。

 そして、親権者にならない一方の親が子供の養育費用を負担する義務があることは、皆さんもご存じのとおりです。

 そこで本日は、養育費の権利は誰に帰属するのか?支払いや受け取りに増減はあるのか?という、養育費の2つの問題について触れてみたいと思います。

養育費は誰に帰属する権利でどう決まるの?


 まず、裁判所は、養育費を支払う側と受取る側の収入や子の年齢・人数などを元に、養育費の算定表を作成し“一定の基準”としています。

 例えば、妻が子供の親権者となり、夫が養育費を支払う場合でも、夫には婚姻中に生活のために夫名義で負担した借金があり、離婚後もその返済を継続していくとき、夫の生活のためにも養育費の額は考慮されることになります。

 また、養育費で勘違いされやすいのが、養育費は「子供を育てる親」が請求権を持っているわけではありません。養育費は子供に請求権が帰属する権利であるため、支払う側の事情を無視することはできません。

 なお、養育期間は20歳までが上限ではなく父母と同等程度の教育を受けさせることを基準として、両親の最終学歴を一定の基準とすることも広く行われています。

一度決めた養育費を減額することはできるか?


 次に、養育費は支払っている途中でも、支払う額に増減はあるのか?考えてみたいと思います。

 離婚協議成立後に(公正証書、調停、審判で離婚した場合も同じです)当事者の事情に変化があった場合、養育費の減額請求は可能です。

 たとえば、離婚した夫婦の一方あるいは双方が再婚したような場合です。

 再婚により、「当然に減額できる!」わけではありませんが、養育費を受け取っている側が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組をしたような場合であれば、再婚相手にもその子を扶養する義務が生じますから、養育費を支払っている親の方の養育費が減額される可能性が出て来るわけです。

 養育費を支払っている側が再婚し、再婚相手との間に子供が生まれれば、同じようにその生活を考慮して、離婚した際に約束した養育費減額の可能性が出て来ると言えます。

増額に備えて養育費支払側が備える事前策は?


 養育費について注意しなければならないのは、逆に増額もあり得るということです。

 例えば、別れた子供が大きな怪我をしたり、病気・入院・手術をする場合、親としてその子のために費用を援助する必要が出て来ます。

 離婚の際に取り決めた養育期間を越えて、「大学に進学したい」と希望するような場合もあるでしょう。

 これは、厳密な意味では、養育費ではありませんが、子供が持つ親に請求することができる権利だと言えるからです。

 従って、別れる妻もしくは夫が『養育費なんて一切要らない!』 と言った言葉を、無条件に信じていてはいけません。

  先述の通り、養育費の請求権を持つのは、親権をもった方の親ではなく「その子供自身」なのです。

 “免除されたはずの養育費”に相当する額を毎月貯蓄し、万が一起こり得る将来の請求に備えているという方も現実におられるくらいです。(執筆者:行政書士 泉つかさ法務事務所)

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