赤字に喘ぐ地銀が生き残り有望な中小の味方となる道はこれだ!

 金融庁は直近発表した試算において、地方銀行の約6割は10年後に融資や投信の販売業務といった本業で、赤字に転落すると予想しました。地銀の統廃合は確かに進むのが当然です。しかし、大手企業への融資はレッドオーシャンで、望みは薄いもの。果たして地銀に生き残るための新たな活路はあるのでしょうか?

金融庁が地方銀行の統廃合の必要性を暗に示す


 金融庁が直近、「約10年後に全国の地方銀行のうち6割が、融資や投資信託の販売などの『本業』で赤字に転落する」という試算を発表しました。

 確かに地方を皮切りに、これからの国内人口は减少入りすることが確実で、金融機関の数が今のまま減らなければ、経営は厳しくなるに決まっています。

 いわば金融庁の試算発表は、「だから地銀の再編が必要」ということを、暗に言わんとしているのでしょう。
 
 統合が進むのは当然として、果たして地銀に生き残る道は存在するのでしょうか?

地銀はリスクマネーのニーズに注意を向けよ!


 地銀は融資先に困り、大手企業の借入れの一部を地銀で受けることができるように営業活動を進めることを含め、業績回復に努めているのが現状です。

 しかし、この融資は地銀が実行しなくとも、都銀が融資できるわけで、はっきり言うと融資先のシェアにおける取り合いをしているに過ぎません。

 言い換えると、大手企業に対する融資は「地銀」がやらなければならない理由がないため、レッドオーシャンと言えるでしょう。

 果たして地銀が、自らの立場を生かしやるべきことは、何なのでしょうか。

 それは銀行としての機能を本質的に取り戻すことであり、言い換えると、ビジネスを、経営者を見て、そこに融資をする、その基本に立ち返ることです。

 もちろん担保、安全第一主義である必要はなく、リスクが高ければ金利は高くて問題ありません。

 リスクマネーは、いわゆるスタートアップ支援といってベンチャー・キャピタル(以下:VC)などが直接金融を行っていますし、この割合は増えています。

 しかし、資金の受け手(出資される側)の立場から見ると、こういった直接投資に対する資本コストは非常に高く、経営の自由度が下がる可能性があります。

 VCの多くも、実はリスクマネーをほとんど出せていないことから、かなり業績達成が見えてきてから資金を出す、というケースに直面しているのが現実なのです。

 ここに、地銀の生き残る道のヒントが一つ見いだせます。

VCとのジョイント業務は地銀にとって十分にビジネスとして成り立つもの


 地銀の生き残る道の一つ、それはVCを相手にして、融資でビジネスを伸ばす企業に対して、やや金利の高い融資を広げていくことが考えられます。

 これは、ビジネスとして十分成り立つはずです。

 問題は、この業務に資する人材の育成でしょう。

 ビジネス、人を見て、回収可能性と適正金利をきっちりと見分ける、人、チーム、それをどのように育成していくのかがポイントとなります。

 確かにVCとのジョイント業務は、とても難しいテーマにも聞こえますが、冷静に考えてみると、銀行の機能そのものを活かせるものです。

 資金を必要とする、優秀な中小企業に少しでも多くの資金が行き渡るよう、地方銀行が自らのあり方を変えられるか、今後も注目していきたいところです。

画像:Wikipedia:旧北海道拓殖銀行本店(執筆者:大原達朗)

【関連記事】