投資家に減税、出資される側に資金調達のメリットをもたらす「エンジェル税制」

 出資する投資家には減税効果をもたらし、出資される中小企業は資金調達を受けられる、「エンジェル税制」という経済産業省が設けた制度をご存じですか?年間で利用している企業数は10数社程度と言われていますが、資金調達の多様化が昨今の潮流となっていることを踏まえると、エンジェル税制に今後更なる注目が集まることが予想されます。

出資される側も出資する側もメリットがある「エンジェル税制」


 読者の皆様は、「エンジェル税制」という制度をご存知でしょうか。

 この制度は、新規事業を行う中小企業が投資家より出資を集めることが可能な制度で、制度を利用する投資家にも中小企業への投資によって減税を受けるメリットがあります。

 節税効果としてそこまでの影響額はありませんが、企業版のふるさと納税に近いイメージを持った制度と言えます。

 実は今年に入って、私もある会社のエンジェル税制申請についてお手伝いをさせて頂きました。

 しかしエンジェル税制は、まだ認知が少ないため、ほとんど活用されておらず、年間で利用している企業数は10数社程度と言われていますが、ぜひ投資されたい人にも、投資したい人にも知っていただきたい制度です。

 それでは「エンジェル税制」が一体どんな制度なのか、制度の内容を簡単にまとめてみます。

エンジェル税制の適用を受けるための条件は?


エンジェル税制の優遇措置とは?


 まず、エンジェル投資家になる側は、エンジェル税制を利用することによって、次のいずれかの優遇を受けられます。

① 『投資額-2,000円』をその年の確定申告で所得から控除できる(寄付金控除、上限あり)
② 投資額の全額をその年の他の株式を売却したことによる譲渡益から控除できる
 ①の制度は設立から3年未満の会社、②は設立から10年未満の会社への投資が対象であり、一般的には①の制度を利用した方が有利になる方が多いです。

エンジェル税制で投資を受けられる企業の要件は?


 エンジェル税制を通じて投資を受けたい企業は、以下の要件を満たす必要があります。

① 創業から3年未満または10年未満の会社であること(年数は制度による)
② 会社の設立経過年数に応じた一定の要件
③ 特定の投資家グループからの出資が合計の5/6を超えていないこと。
④ 大会社又はその子会社ではないこと、未上場会社であること、風俗営業ではないこと。
 ②の一定要件とは、新事業のために一定の人員やコストを要しているか、営業キャッシュフローが赤字か、などの要件に当たります。

 また、「新事業」とは必ずしも研究を擁するような事業でなくても構いません。

エンジェル税制で減税制度を適用できる投資家の要件は?


 エンジェル税制を活用した投資により減税を受けたい個人投資家は、以下の要件を満たす必要があります。

① 金銭の払い込みにより株式を取得している
② 対象企業の株式保有割合の順位で上位3位以内に入らないこと
 なお、②の要件は正確にはより細かい要件がありますが、煩雑であるため解りやすいように説明を簡略化しています。

 具体的には以下のご案内に、エンジェル税制の詳細が記載されています。

 エンジェル税制のご案内:詳細ページ

エンジェル税制を活用し経営を有利に進めよう


 エンジェル税制により投資を受ける際には、細かい要件が用意されていますが、実は複数の投資家から資金を集めている会社であれば、上記の要件はある程度当てはまっている可能性が高いです。

 大企業の子会社はこの制度の利用が出来ませんが、中小企業ならば、最近は投資型のクラウドファンディング等、資本が自由化されて行く中で、この制度の利用が出来るケースは増えていくことが予想されます。

 投資を受ける側の中小企業に当てはまりそうなら、ぜひ経済産業省に確認申請をし、エンジェル税制の対象企業として確認を受けてみませんか?

 ※経済産業省:エンジェル税制のご案内

 利用出来る制度は極力利用して、経営を有利に進めていきましょう!(執筆者:山田典正)

【関連記事】