ネットの背後にスタッフ8人が待機。「オンライン接客」が好評なイエッティのケース
ここ最近、企業の運営するウェブサイトにおいて、「セルフサービス化」された運営を脱却し、「オンライン接客」を志向する潮流が生まれ始めています。本稿では、その具体事例として'iettty(イエッティ)'という、不動産仲介業者の運営するサービスをご紹介します。AIの台頭により「オンライン接客」は今後更に拡大しそうです。
ウェブサイトに「オンライン接客」の潮流が発生
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
先日公開した記事、「人の介在無くしてもはや発展無し?!リアル店舗化する企業のウェブサイト」では、企業のウェブサイトが、従来の「セルフサービス化」を志向するのではなく、近年はむしろ人手をかけて手厚い対応、サービスを志向する流れへと変わってきていることをお伝えしました。
今回は、ウェブサイトを通じた「人による丁寧な対応」を行う企業の具体事例をご紹介します。
'iettty(イエッティ)'は、賃貸のマンションやアパートなどを紹介する、いわゆる不動産仲介業者です。
私たちが賃貸物件を探す場合、まずはインターネットの賃貸物件サイトで、自分に適した間取りや立地ごとに、異なる賃貸料の相場を比較したりしますね。
ただ、引っ越し慣れしていない人にとって、無数にあると思えるたくさんの賃貸物件のどれがいいのか、判断に迷うものです。
このため、結局のところ、住みたい街の最寄り駅の不動産屋さんに直接出かけて、担当者の話を聞くことになるのではないでしょうか。
ネットの背後に8人のスタッフ〜イエッティのオンライン接客
とはいえ、忙しい社会人が平日に時間作るのは難しいですし、夜遅くまでやっている不動産屋さんもそれほど多くありません。
週末は週末で、レジャーなど優先したいことがたくさんあります。
イエッティでは、こうした消費者が自宅等にいながらにして、リアルな問い合わせができる「オンライン接客」に力を入れています。
具体的には、消費者が同社のウェブサイトに行くと、リアルチャットサービスを利用することによって、ネットを介してイエッティのスタッフから賃貸物件探しのリアルタイムサポートが受けられるというものです。
チャットで相談できる時間は朝10時から夜11時まで。おかげで、夜しか時間のない若いビジネスパーソンの利用が多くなっているとのこと。
リアルタイムでのチャット対応ですから、イエッティのオフィスには常時6~8名のスタッフが待機。毎日数百件もの問い合わせを受け付けています。
賃貸物件を探している人としては、自宅でお茶でも飲みながら、ゆったりとイエッティのスタッフとチャットでの会話を行い、自分の希望の物件を探すことができるというわけです。
街の不動産店舗の場合、いったんお店に入ってしまうとなんとなく断りづらくなり、スタッフのおススメに乗って、後でよく考えると「この部屋で良かったかな」と、ちょっと後悔するような物件を契約してしまうかも、という心配があります。
しかし、オンラインであれば同じ場にいないわけですから気が楽です。「とりあず今日はこれで寝ます。さようなら」などと、チャットを終了することができます。
AIの台頭で「オンライン接客」は今後更に拡大
このように、リアル店舗に足を運ぶと営業マンに押し切られるのでは?という不安を持ち「店舗へ行くのは敷居が高い」と感じる消費者にとって、「オンライン接客」は、より気軽に問い合わせができる方法として利用しやすいのです。
イエッティとしては、オンライン接客の効果を実感しているものの、当然ながら対応するスタッフの人件費とのバランスを考慮する必要があるため、現在「AI(人工知能)」の導入に向けて、東京大学大学院情報理工学部系研究科の山崎研究室との共同開発を行っています。
もちろん、消費者からの問い合わせにAIが対応する「チャットボット」ですべてを置き換えるつもりはなく、定型的な質問にはチャットボットで、最後のひと押しをリアルなスタッフがやる、といった役割分担を考えています。
お客様にとってオンラインでも手厚いサービスを提供しつつ、相応の利益を確保するためにAIの活用はもはや必須です。
どちらにせよ、ウェブサイトが、セルフサービスから手厚いサービスを提供する方向へシフトしつつあることを、読者の皆様も実感していただけたのではないでしょうか?(執筆者:松尾 順)