新潟の第三セクターが運営するホテルを中国資本へ売却したのはなぜ英断か?

 12月末に、中国資本の日本山嶼海(さんよかい)株式会社が、新潟県阿賀町100%出資の第三セクターにより運営されているホテルを買収することが報道されました。中国を始めとする外国資本にとって、日本は魅力的な投資市場です。一方で、国内では人種や国籍を一括りに、これら案件を潰してしまう例が多々見られます。取引は「国籍」ではなく「人」と行うものです。

中国資本が新潟で第三セクター運営ホテルを買収した


 12月末に、中国資本の日本山嶼海(さんよかい)株式会社が、新潟県阿賀町100%出資の第三セクターが運営するホテルを買収する、と報道されました。

 買収される「ホテルみかわ」は、18部屋で90人のキャパ、6期連続で赤字で負債が7千万円とのこと。

 いわゆる普通のホテルM&Aですが、中国資本による買収については、最後の町議会でも議決権が賛成8票・反対6票に割れるなど、最後まで紛糾したようです。

 賛成した側は、従来通りの町民利用とインバウンドの流入の双方を成り立たせることを、日本山嶼海(さんよかい)株式会社が認めたことを買って、賛成票を投じたようです。

外国資本の流入に不安はあるが、ニーズがあることも真実


 一方で中国資本は日本の不動産を買いたがっています。

 その大きな理由は、中国人のお金持ちが自分の国を信頼できず、人民元を外貨へ転換をしているわけですが、共産党政府は意味もなく、それを許すはずも無いため、なかなかお金持ち中国人も資産運用に苦労をしているからです。

 しかし、投資、M&Aとなれば話は別で、実質人民元を外貨へ変える大きなチャンスになっているようです。

 ただ、日本人の多くは中国人の方に対する偏見も多く、実際にはなかなかM&Aが成立していません。

 そんな中、第三セクターで、地方自治体が絡んでいる案件で、中国資本への譲渡ができるのは画期的なことと言えます。

 譲渡まで1年間くらい間があるようで、実際に譲渡が完了するか、不安な部分も正直あります。

 とはいえ、それ以上に、普通のホテルが、普通に中国を含めた外資に売却されるというのは、それだけクロスボーター(国境をまたいだ)の取引が、浸透してきたということでしょう。

「国籍のくくり」で考えるのを止め信用できる「人」と取引せよ


 私自身、東南アジア諸国との間で、クロスボーダー取引を実践している人間ですが、読者の皆様にあえて提言したいことがあります。

 中国人をはじめとして、外国人に偏見がある方がいらっしゃるなら、まずその大きな「国籍のくくり」を無くしてみるのは如何でしょうか?

 日本人にも色々な方がいます。同様に中華圏には17億人の人々が暮らしているわけですから、それこそ色々な人がいるわけです。

 大きな枠でまとめるのではなく、個人と会って、話をして、一緒に仕事をしてみてください。そして、信用できる人を見つけてください。

 その上で、クロスボーターでは、法律やルールが違う点をフォロー、そしてやれる方法を考えてください。

 はじめは信頼できる先なのか、引継ぎたい業務なのかをしっかり考えることが大切です。はじめから法律や税務のことを考えるとできない理由ばかりが目につき、たいていの場合うまくいきません。

 企業規模の大小に関係なく、ビジネスの国際化はもはや止めることの出来ないうねりとなっています。

 そのような意味で、今回の「ホテルみかわ」売却を決めた新潟県阿賀町は、リスクがあるのはもちろんですが、地方自治体として大きな英断を下されたと考えています。(執筆者:大原達朗)

【関連記事】