「署名」と「記名」って何がどう違うの?日本人が印鑑好きな理由

 「署名」と「記名」、似ているような言葉ですが、それぞれの行為で発生する効力が全く違うものであることをご存知ですか?個人事業主や経営者の方は契約を結ぶ機会が多いので、両者の違いや、効力がどのように変わるかを覚えておくことは有益です。併せて、なぜ日本人が印鑑好きなのかについて小ネタとしてお届けします。

ご存知ですか?署名と記名は全く別という事実


 「署名」と「記名」、並べてみると「ただちょっと漢字がちがうだけじゃん?」という感じがしますが、法律上この2つにはハッキリとしたちがいがあります。

 先に簡単にまとめてしまうと、
  • 署名:本人の氏名を自分の手書きで書くこと
  • 記名:氏名を書くこと(印刷してあってもゴム印であってもOK)
 という違いがあります。

 実は、お客様から「署名の欄にゴム印押しておけば良いんだよね?」と質問され、改めて考えると違いが大きいなと感じた次第です。

 そこで本日は、署名と記名の違いについて詳しくご説明したいと思います。

署名と記名の違いを解説〜強いのはどちら?


署名(自署とサイン)とは?


 上記にも書いたように、署名というのは本人が自らの氏名を、自分の手書きで書くことを意味します。

 この「自分の手書き」というのが重要で、こうすることによって「本人が自分の意思で契約したんだな」ということが客観的に判断できるようになります。

 知り合いの弁護士さんにも聞いたのですが、もし裁判をすることになっても、非常に証拠能力が高いのが署名ということです。

 ちなみに、筆跡鑑定というものがあるぐらいで、筆跡には必ず本人の癖が出るそうです。

 つまり、もしハンコがなくても署名さえしてもらえれば証拠能力の高い書類になります。

 「自署」や「サイン」も同じように自分の手書きで名前を書くという意味で、個人的には「自署」だとより手書き感が出るような気がします。

記名とは?


 こちらも上に書いたように、記名というのは印刷したものであれゴム印であれ、氏名が表示されているものを意味します。

 つまり、記名自体は本人でなくてもできるので、偽装が簡単ということですね。必然的に証拠能力は署名よりぐっと低くなります。

 従って、記名の時は大体「記名押印」といって、押印(印鑑・ハンコを押すこと)とセットになっていることが多いです。

 「ハンコを持っているならまあより本人っぽいかな」ということですね。

 でも結局よくある名字なら100円ショップで買えちゃいますので、重要な契約の場面では実印(と印鑑証明書)になることがほとんどです。

署名と記名を表で比較してみよう


 ここまでをまとめて、簡単な比較表を作ってみました。

署名
(自著・サイン)
本人の氏名を自ら手書きで書くこと証拠能力が高い
記名氏名を書くこと
(印字・ゴム印もOK)
証拠能力低め
(実印を押せば署名と同じ効力)

 今後の参考にしてみてください。

捺印と押印の違い〜なぜ日本人は印鑑好き?


 さて、捺印と押印、こちらもどちらがどういう意味を持つか、突っ込まれると答えにくい分野ですよね。

 こちらは署名と記名と違い、大きな意味の違いは無く、捺印=押印、と考えて問題ないようです。

 ちなみに、欧米諸国では印鑑をほとんど使わず、契約書類もサインで済ませるケースが圧倒的です。

 対して日本は本当に印鑑が好きですよね。

 でもこれ、日本だけではなく、中国のような漢字を使う国では同じような傾向があるようです。

 双方の国に印鑑文化が浸透した理由、それは「漢字」です。

 漢字の印影は複雑に作り込むことが出来るのが、印鑑が日本に浸透した理由の一つにあるとのこと。

 話は脱線しましたが、特に個人事業主や経営者の方は契約を結ぶ機会が多いものです。

 少なくとも「ハンコがないときは署名でも高い証拠能力がある」ということは覚えておいても損は無いでしょう。(執筆者:谷口 孔陛)

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