ライバルとの違いを明確にするバリュープロポジションの抽出方法

 たとえ良い商品やサービスを開発しても、売れるとわかればライバルは皆真似をすることでしょう。従って私達は常に、顧客に対して「どのような価値を提供しているか」ということについて、ユニークなポジションを築いておく、自分たちの強みを知っておく必要があります。誰でもできるバリュープロポジションの抽出方法をご紹介します。

バリュープロポジションの重要性が増している


 スイスのザンクトガレン大学が、ここ50年間に生まれた画期的なビジネスモデル・イノベーション事例を多数集めて分析したところ、驚くことに90%以上の事例は、他業界における既存のアイデアや概念の組み合わせに過ぎないことが判明しました。※

 また、私達がどんなに商品で差別化を図ろうと思っても、その活動には限界があります。

 なぜなら、商品を真似することは簡単だからです。

 たとえ私達がとても良い商品やサービスを開発して、一時期大ヒットしたとしても、売れるとわかればライバルは皆真似をすることでしょう。

 このような時のために私達は、業界に対して、あるいは顧客に対して、「どのような価値を提供しているか」ということについて、ユニークなポジションを築いておく必要があります。

 もしも、横並びの商品やサービスしかないなら、なおさらユニークなポジション作りが必要になります。

 これを可能にするため、私達は自らのバリュープロポジション(提供価値)を知らなければなりません。

 本稿は、このバリュープロポジションについてご紹介できればと思います。

バリュープロポジションとは一体どんな概念?


 バリュープロポジションとは、
  • 1)顧客が望んでいて
  • 2)競合が提供できない
  • 3)あなただからこそ提供できる価値
 のことを指します。

 もっと噛み砕いて言えば、バリュープロポジションとは、あなたしか提供できない、人の幸せにつながる新しい価値を、創造して提供することに他なりません。

 こんなことを言うと、様々なところからこんな声が聞こえてきそうです。

  「だって、それが分からないから、みんな苦労しているんじゃないか? 」

 そうです、その通りです。

 でも、あなたの身の周りにある商品をみてください。

 テレビのリモコンを使う時、あなたは全部の機能を使っていますか?

 スマートフォンにも様々な機能がついていますが、これら全部の機能を使い倒しているでしょうか?

 これもできる、あれもできる。ということを、顧客は本当は望んでいないのです。

 にも関わらず、「競合他社もやっているから、ウチもやる」と十分に検討せずに、横並びの意識でやっていることはないでしょうか?

顧客が望んでいる価値を抽出する2つのアプローチ


 業界の中で横並びとなり、没個性化を防ぐための第一作業は、「顧客が望んでいる価値を考える」ことです。

 これには2つの方向からのアプローチがあります。

 一つ目は、顧客の悩みや困りごとから考えるアプローチであり、二つ目は人間の根源的な10の欲求から考えるアプローチです。

 以下、どのようにアプローチすればよいかご説明しましょう。

顧客の悩みや困りごとから考えるアプローチ


 あなたがこれからやろうとしているビジネスで、ターゲットとしている顧客が悩んでいること、困っていることを徹底的にリストアップしましょう。

 具体的には、
  • 1)商品やサービスの情報
  • 2)商品やサービスを提供する人・場所の探し方
  • 3)商品やサービスを購入する方法
  • 4)購入時の価格
  • 5)使用時の機能
  • 6)リピート購入の可否
  • 7)アフターサービス
  • 8)廃棄する際
 このように、顧客が商品と接する様々な場面を分解して考えると、きっとあなたの商品についても、色々な悩みや困りごとが出てくることでしょう。

人間の根源的な10の欲求から考えるアプローチ


 インターネット・コンテンツビジネスの生みの親である、米国のジェフリーラント博士によると、人間の根源的な欲求は10個あり、この欲求からあなたの商品について、新しい価値を考えることが可能です。
  • 1)経済的な安定が欲しい
  • 2)健康が欲しい
  • 3)愛が欲しい
  • 4)安全(安心)が欲しい
  • 5)救済が欲しい
  • 6)自尊心(名声・尊敬)が欲しい
  • 7)帰属意識(コミュニティや仲間との調和)が欲しい
  • 8)独立した環境が欲しい
  • 9)性的な満足が欲しい
  • 10)美貌・個人的な魅力が欲しい
 この中で、貴方の商品は顧客からどんな欲求を求められているのか、考えてみましょう。

自分が提供できる価値を考える10個の質問


 先程も話したようにバリュープロポジションは、
  • 1)顧客が望んでいて
  • 2)競合が提供できない
  • 3)あなただからこそ提供できる価値
 を指しています。

 顧客が望んでいる価値を考えたら、次は、「競合が提供できない」「あなただからこそ提供できる価値」を考える必要があります。

 これをあぶり出すには、あなたの強みを棚卸しすることが有効です。

 次の質問に答えながら強みを棚卸ししてみましょう。
  • 1)あなた(自社)に出来て、他の人に出来ないことは何ですか?
  • 2)あなた(自社)が上手なこと、得意なことは何ですか?
  • 3)あなた(自社)にとって、上達が早いこと、成長著しい分野は何ですか?
  • 4)あなた(自社)が人(他社)に「凄いねっ!」って言われることは何ですか?
  • 5)あなた(自社)が人(他社)に相談されたり、お願いされたりすることは何ですか?
  • 6)あなた(自社)が今までお金をたくさん費やしてきたことは何ですか?
  • 7)あなた(自社)が今まで時間をたくさん費やしてきたことは何ですか?
  • 8)あなた(自社)が人にしてあげて喜ばれたことは何ですか?
  • 9)あなた(自社)が所有しているもので活かせるものは何ですか?
  • 10)あなた(自社)が今まで以上に上達したいと思うことは何ですか?
 この質問に答える場合、あなたがこれからやろうとするビジネスの領域を考慮せずに、自由に自分の強みをあげていくことがポイントです。

 なぜならば、全然関係がないと思われることでも、それがあなたのビジネスの強みにつながってくる可能性があるからです。

3つの概念で共通する項目があなたのバリュープロポジション


 ここまで、
  • 1)顧客が望んでいること
  • 2)競合が提供できないこと
  • 3)あなただからこそ提供できる価値
 の抽出を行いました。

 専門書で3C分析やSTP分析と呼ばれるものを噛み砕いたのが、上記の質問による自己分析です。

 膨大な量となるはずですが、今度はこれをまとめていきます。

 すると、3つの分析で共通するキーワードがあるはずですが、これがあなた(自社)のバリュープロポジションを構成する要素となります。

節約社長

 バリュープロポジションを構成する要素については、
  • 実行可能なものを、
  • 顧客にとって効果が伝わるよう、
  • 専門用語を使わずに、
 短い言葉でまとめてみましょう。

 そうすることで、あなたと顧客がバリュープロポジションを共有できるようになるからです。

 ぜひ一度、あなたのバリュープロポジションを抽出してみませんか?

※ビジネスモデル・ナビゲーター オリヴァー・ガスマン (著) (執筆者:大場保男)

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