東芝が監査法人を変更か?大手監査法人の思惑と東芝が置かれた立ち位置

 東芝が現監査法人であるPwCあらたとの間で、会計処理について合意を得られないため、後任監査人として太陽監査法人を検討していると報道されています。大手の監査法人が匙を投げた中で、準大手規模の太陽が膨大な工数の監査をやりきれるとは到底考えられません。東芝にとって6月末までに決算を出すには厳しい状況にあり、上場維持か廃止かの岐路に立たされています。

東芝が後任監査人として太陽監査法人を検討?


 東芝が現監査法人であるPwCあらた(以下、あらた)との間で、会計処理について合意を得られないため、後任監査人として太陽監査法人(以下、太陽)を検討していると報道されています。

 太陽の監査法人としての規模は、全国で従業員が400人弱の準大手規模ではあるものの、金融商品取引法・会社法監査を対象とするクライアント(いわゆる上場企業)を既に145社抱えており、いわゆるオーバーワーク状態です。※

 太陽が本気で東芝の監査をするとは考えていないと信じたいですが、東芝の立場から見れば、大手がもうやらないという前提で、お願いするとすれば太陽くらいしか思いつかないということでしょう。

監査法人にとってリスクが大きい東芝の監査


 すでに公認会計士協会も金融庁も、現東芝の監査人であるあらたの調査に入っているはずで、彼らの監査が妥当かどうかは目処がついているはずです。

 仮に問題が有っても、無かったとしても結論が見えていれば、次の方法は明らかです。

 仮にあらたの監査に問題があった場合には、現実的に考えてあらたを処分する必要があり、監査人に問題があったため、特例措置を設けて大手の監査法人がやるしかありません。

 残るはトーマツかあずさとなりますが、現在東芝の監査委員会委員長の佐藤氏がトーマツの元トップであることを考えると、あずさが候補となるでしょう。

 参考リンク:東芝:役員紹介

 しかし、太陽を候補にしているということは、あずさもトーマツもやらないと決めているのでしょう。

 それにしてもこんな大事な情報をいまだに、ダダ漏れさせている東芝の情報管理についても、あらためて申し上げるまでもなく残念です。

膨大な工数ゆえ太陽が監査を受けても6月末までの監査終了は厳しい


 本題に戻りますが、仮に大手が東芝の監査が担当するとしても、特例措置をもうける必要がある旨を申し上げました。

 それは現在、問題になっている2017年3月31日期の決算の監査を今からやるには、時間があまりに足りないからです。

 東芝は正常であれば売上5兆円、連結子会社が500社以上の企業であり、その監査を遡ってやるのは並大抵のことではないです。

 これら全てを遡って監査が数値を検証するとなれば、膨大な作業が必要になります。

 仮に監査人を変更するとしても、そもそも6月までに監査を終了することは事実上不可能なため、監査できる期間を延期する必要があります。

 そして、その工数を賄えるだけの数と経験をもった会計士を、太陽監査法人を含めた大手以外の監査法人では準備できません。

 東芝の側から見れば、上場を維持する上で非常に重要な岐路へ立たされている、というのが現状です。

※太陽有限責任監査法人ホームページ
http://www.gtjapan.or.jp/corporate/gaiyou.html

Photo credit: Steve Snodgrass via VisualHunt / CC BY(執筆者:大原達朗)

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