ユニリーバの「大学1~2年生に内定」企業はどんなリスクを背負う?

 家庭用の一般消費財を販売するユニリーバ・ジャパンが、大学卒業の2年前に内定を出す新卒採用制度を導入したことを先週発表しました。最速だと大学1年生に対して内定を出す、前代未聞の制度ですが、実際に働き始める数年前に内定を出すのは可能か?どんなリスクが発生するのか?気になるところです。

ユニリーバ、大学1年生にも内定出すってよ。


 家庭用の一般消費財を販売するユニリーバ・ジャパン(東京)が、大学卒業の2年前に内定を出す新卒採用制度を導入したことを先週発表しました。

 ユニリーバは通年で応募を行うため、大学生でも最速だと1年生で内定をもらうことができるようになります。

 このニュースを聞いて気になるのは、
  • 実際に働き始める数年前に内定を出すことは可能なのか?
  • 数年先の内定を出すことで企業にどんなリスクが発生するか?
 という2点です。

 法律や過去の判例から、それぞれの答えを探ってみましょう。

数年先の内定はOK?企業が負担するリスクは?


 まず、実際に働き始める数年前に内定を出すことは可能なのか?というところから考えてみます。

 結論から言うと、仮に大学1~2年生に採用内定を出したとしても、卒業後の入社日を「始期」とするのであれば、学生とって何ら不利益もなく、労働法上も問題はないものと考えられます。

 この数年先の採用内定についての判断は、その法的性格を「始期付・解約権留保付労働契約」であるとする考え方が判例上確立しております。(最2小判昭54.7.20 大日本印刷事件)

 もっとも、内定者を対象に、入社前研修や懇親会を強要し、学業を妨害するようなことはもちろん許されません。

 では、数年先の内定を出すことで企業にどんなリスクが発生するのでしょうか?

 これについては、数年先の入社を決める内定を出した場合、一方的に企業がリスクを負う状況になります。

 というのも、内定を出した以上、内定取消(解約権の行使)をしようとすれば、「採用内定の取り消し事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる」(前掲の大日本印刷事件)という判例上の高いハードルが課せられるからです。

 数年前は景気が良かったから内定を出したけれども、予期せぬ景気変動で雇えない状況になった、という理由で内定を取り消すことはできません。

 また、学生の側も心変わりするでしょうし、時間の経過とともに内定辞退の可能性も上がりますので、内定者の囲い込み維持コストが相当にかかることになります。

 一般的にはハイリスクローリターンと言わざるを得ません。

 それを差し引いても、優秀な学生と接触を持つという人事戦略があるのであれば、そういうご選択もあろうかと思います。

おまけ:「就職活動解禁」って絶対の義務?


 最後に余談ですが、大学生の就職活動では、よく春先頃に「就職活動解禁」というニュースが流れ、学生も企業も一斉に就職活動をスタートさせる「べきだ」という風潮があります。

 実際のところ、これは法律が定めるものではないため、企業は何月から大学何年生をターゲットとしても、何ら問題はありません。

 「就職活動解禁」とよく言われるものは、日本経済団体連合会(経団連)による「採用選考に関する指針」というガイドラインが定められたものだからです。

 経団連に参加する大企業がこぞって、一斉に採用活動を開始することから、世の中も雰囲気的に「この時期から始めよう」となっているだけの話であって、最近ではもっぱら早い段階から採用活動を始める企業が増えています。

 ただし、「正常な学校教育と学習環境の確保」「公正な採用選考」は政府から求められるものであり、企業側もこれを遵守する必要があるでしょう。

Photo credit: Dick Thomas Johnson via Visualhunt / CC BY(執筆者:渡邉 大)

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