建築現場の手間とリスクを削減する一括有期事業開始届とは?

 期間を区切って行う事業のうち、立木伐採・建設事業のことを「有期事業」といいます。有期事業を運営していると、頻繁に人事の役所手続きが多くなるためミスが多くなりがちですが、これが続くと「悪質性が高い!」として、労基署にマークされてしまいます。中でも届出忘れが多い、「一括有期事業開始届」についてご紹介したいと思います。

有期事業は手続きが面倒。一括有期事業開始届もその1つ


 期間を区切って行う事業のうち、たとえば「◯年◯月◯日~△年△月△日まで」の様に、事業の開始と終わりが予定されている、立木伐採・建設事業のことを「有期事業」と言います。

 有期事業を運営していると、頻繁に人事の役所手続きが多くなりまよね。中小零細企業の場合だと経営者(いわゆる親方さん)がこの役割を担うこともあり、本当に大変です。

 本来あってはいけないミスですが本当に作業が煩雑なので、繰り返しのミスをすることもあるようです。

 ところが、これが続くと「悪質性が高い!」として、労基署にマークされてしまうことがあります。

 そうなりやすい書類の1つに「一括有期事業開始届」がありますので、ご紹介したいと思います。

一括有期事業開始届を出して認められる要件


 複数の有期事業があり、それぞれ全ての事業が決められた要件に該当すると、個別の事業は「法律上当然に」一括されます。

 一括有期事業になると継続事業と同じように扱われます。

 それぞれの事業が一括できるかどうかは、下記の要件に該当するか否かで決まります。

1)事業主


 事業主が同じ人であること

2)事業の限定


 それぞれの事業が立木の伐採の事業か建設の事業であること

3)金額や量の確認


 それぞれの有期事業の規模が、概算保険料の試算で160万円未満(平成11年4月1から)、かつ立木の伐採の事業の場合には素材の生産見込み量が1,000立法方メートル未満、建設の事業の場合には請負金額が1億9,000万円未満であること。

 事前に試算した時点で上記の規模だった有期事業が、その後の変更によって保険料の金額、素材の見込み生産量、工事の請負金額に変更があって、結果的に一括する為の基準以上になったとしても、その分を一括から外す必要はありません。

4)労災保険率表の確認


 それぞれの事業の種類が、建設の事業は、労災保険率表上の事業の種類と同じあること。

 事業主が同じだったとしても、当該年度に予定している複数の事業の種類が違う場合には、事業の種類ごとに保険関係成立の手続が必要になります。

 一方で、
  • 事業主が希望した場合:主たる事業の種類(当該年度に予定している事業の中で事業の種類ごとの概算保険料の算定基礎となる賃金総額が一番多い事業)に係る保険関係成立の手続
  • 主たる事業の種類以外の事業:主たる事業に含めて一括して1つの保険関係
 として取り扱うこともできます。

5)場所の確認


 それぞれの事業の保険料納付の事務所が同じ場所にあって、かつ、それぞれの事業が、その一括事務所の所在地を管轄する都道府県労働局の管轄区域か、それと隣接する都道府県労働局の管轄区域内にあることが必要です。

 ですから、場所的にあまりにも離れている場合には一括できません。

一括有期事業開始届は月に1回・毎月10日までに報告


 有期事業として一括された事業は、事業の開始の都度に手続きをする必要がありません。

 ただし、いつ、どこで、どんな事業が行われているかを把握していないと、労働災害が発生して保険給付を行う場合等に問題が生じる可能性が高くなります。

 毎月10日までに、その前月中に開始した事業について、事務所の所在地を管轄する労働基準監督署に報告することになっています。この報告のことを「一括有期事業開始届」といいます。

 一括有期事業開始届には、事業の名称と所在地、請負金額等を事業ごとに記載することになっています。

 なお、請負金額が500万円未満の事業または素材の見込生産量が30立方メートル未満の事業については個別に書かずに、事業の種類ごとに取りまとめて◯◯工事(または ◯◯現場)その他△件というように書くことも認められています。

一括有期事業開始届を出さないと罰則もキツくなる


 例えば、「一括有期事業開始届を出していない」×「労災保険の加入手続きもしていない」という場合を考えてみましょう。

その1)行政指導なし × 手続きなし = 労災発生



  • 行政から労災保険加入手続についての指導等を受けていない状態で、事業主が事業開始の日から1年を経過しても加入手続を行わない期間に労災事故が発生してしまった。
  • 「重大な過失により手続を行わないもの」と認定される。その結果、費用徴収の対象になり保険給付額の40%を徴収

その2)行政指導あり × 手続きなし = 労災発生



  • 加入手続について行政から指導等を受けた状態で、事業主が指導に従った加入手続きを行わない期間に労災事故が発生してしまった。
  • 「故意に手続を行わないもの」と認定される。その結果、保険給付額の100%を徴収(平成16年改正前は「故意または重大な過失により手続を行わないもの」と認定して保険給付額の40%を徴収)される。

 このように、一括有期事業開始届を提出しない場合、かなり厳しい罰則が用意されています。こうならない為にも、思い込みはないか、勝手な判断はないか、勘違いはないか?確認してください。

 一括有期事業開始届は、複数の事業を管理すると発生してしまう事務作業の煩雑さを軽減するためにも便利な制度です。

 手続きのタイミング、個々の有期事業が一括する要件に該当するか否かを考え、有効に活用できるといいですね。(執筆者:株式会社iCARE)

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