手書き文章VSタイプ文章販促やクレーム対応に効果的な文章は?

 一般的に販促やクレーム対応でお客様にメッセージを伝える時は、「タイプした文章より手書き文章のほうが良い」と言われています。しかし、実際のところはどうなのでしょうか?この疑問を科学的に紐解くべく、応用脳科学コンソーシアム「アナログ価値研究会」は、「手書きの価値の実証実験」を行いました。結果は如何に?!

「手書き文章」と「タイプ文章」気持ちが伝わるのはどちら?


 先日、ネット通販でギフト用にある商品を購入したところ、梱包に不備があり、商品本体のパッケージがつぶれていました。

 ショップにクレームを入れたところ、代わりの商品と手書きの丁寧なお詫び状が届き、なんだかホッコリしました。

 このようなお詫び状だけでなく、ファン作りやリピート促進施策として、手書きのお礼状などを商品に同梱するショップもありますね。

 一般に、書き手の気持ちをより伝えたいシチュエーションでは、ワープロより「手書きが良い」と言われています。

 でも、実際のところ、本当に相手の思いはワープロより手書きの方が良く伝わるのか、手書きなら雑に書いてもよいのか、科学的に検証した実験結果がありましたので、ご紹介したいと思います。

「アナログ価値研究会」による「手書き文章VSタイプ文章」の科学的検証


 NTTデータ経営研究所が産学共同で組成した、応用脳科学コンソーシアム「アナログ価値研究会」は、「手書きの価値の実証実験」を行いました。※

 実験では、
  • 1:手書きの文章(ゆっくり時間をかけて心をこめて書く)
  • 2:手書きの文章(自分の書ける最高のスピードでできるだけ素早く書く)
  • 3:パソコンで作成した文章
 の3つの文章で、読み手に与える印象がどのように変化するかが検証されました。

 書き手に対しては予め、
  • 1:心を込める条件の教示:「ゆっくり時間をかけて心をこめて書いてください」
  • 2:速記条件の教示:「自分の書ける最高のスピードでできるだけ素早く書いてください」
  • 3:タイピング条件:「指定された文章をタイプしてください」
 という教示が行われました。

 また、読み手(被検対象40名)には、3つの文章を以下のシチュエーションで読むよう教示が行われました。

今回、あなたの友人がサプライズであなたのための誕生パーティーを開いてくれました。友人知人を集めた盛大なもので、出席者は幹事が配ったカードにあなたの誕生日を祝うメッセージを寄せてくれました。出席者の中にはあなたの友達の知人やその友人もいるため、直接知らない人もいます。パーティーが終わった後あなたはそのカードを読んでいます。多くの人からメッセージをもらったので、同じ内容のものが多くありましたが、気にせずに読んでいます。
 手紙の印象(思いがこめられているか)、視覚的特徴(可読性、美しさ、丁寧さ)はVAS(visual analog scale)により1-100で定量的に評価され、書き手が手紙を書くのにかけた時間(推定/秒)と共に数値化されました。

 この実験の結果は以下のとおりです。

心をこめるVS速記


 読み手は「心をこめて書いた条件」で、(速記条件と比べて)「時間がかかった」と推定しました。

読み手が「思いが込められている」と感じた度合い


 読み手が「思いが込められている」と感じた度合いは、「手書き:ゆっくり心をこめて」>「手書き:速記」>「タイプ文章」という順番になりました。

読み手が「丁寧である」と感じた度合い


 読み手が「丁寧である」と感じた度合いは、「手書き:ゆっくり心をこめて」>「タイプ文章」>「手書き:速記」という順番になりました。

シチュエーション別にデジタル・アナログ両者の使い分けが肝要


 実験の結果、手書きの文章はタイプされた文字に比べて、「思いが込められている」という印象を与える、ということは定説通りだと数値でも実証されました。

 一方、タイプされた文章は、急いで(雑に)書いた文章より「読みやすく丁寧である」という印象を与えるようです。

 「情」に訴えたいお礼状やお詫び状は「手書き文章」で(できれば丁寧に)、事務的なお知らせ事項は短時間で作成でき、かつ「読みやすく丁寧である」印象も損なわない「タイプ文章」が効率的といえそうです。

 目的や状況に応じて、デジタル・アナログ両者のそれぞれの良さを上手に使い分けると良さそうですね。

※手書きや紙の持つユニークな価値について心理科学・脳科学的アプローチで検証~応用脳科学コンソーシアム 「アナログ価値研究会」~(株式会社NTTデータ経営研究所 平成29年7月4日)
http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/170704/(執筆者:久保 京子)

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