内部留保への課税政策を政府が打ち出したら企業に資産の防衛方法はあるか?

 某政党が衆議院選挙の公約で消費税増税はストップする一方、企業の内部留保への課税を打ち出し、ちょっとした話題になりました。確かに、2016年度の企業の内部留保は400兆円を超え過去最高を記録しました。政府も現時点で内部留保に対する課税に無策なわけではありません。もし、内部留保への課税政策を政府が打ち出したら企業に資産の防衛方法はあるのでしょうか?

選挙期間中に話題となった内部留保課税とは?


 某政党が衆議院選挙の公約で消費税増税はストップする一方、企業の内部留保への課税を打ち出し、ちょっとした話題になりました。

 本来会社(株式会社)の仕組みは、出資者(株主)が出資したお金を使って利潤を上げ、その利潤を株主に分配(配当金)する、という流れになっています。

 その利潤を株主に分配せずそのまま会社に留めおく(=留保)するものを内部留保(留保金)と呼びます。

 財務省によれば、2016年度の企業の内部留保は400兆円を超え過去最高、うち210兆円が現預金とのことです。当然これは全体の合計数値ですので、この金額を多いと見るかどうかは別の議論となるでしょう。

企業が現状持つ内部留保に対する政府の対応


 国としては会社が利益を上げたときに法人税、配当したときに所得税という税金を徴収することができます。ところが配当せずに内部留保されてしまうといつまで経っても所得税分の税金が徴収できません。

 もちろん、会社にとっては様々な状況に対応するため一定の留保金を確保しておくことは重要です。但し、あまり多くため込んでしまっては、税金が徴収できないだけでなく、本来貰えるはずの個人にお金が回らず個人の消費行動にはプラスになりません。

 会社は留保した資金を再投資してさらに利潤を上げることができますが、それでは儲かるのは会社だけということになってしまいます。

 最近では、巨額の内部留保があるならそれを従業員に還元(給与、賞与など)せよという声も起きています。

 実はこの留保金に対する課税は、既に存在している税金でもあります。

 特定の同族会社を対象に、一定額以上の留保金があれば通常の法人税とは別に税金をかける(特定同族会社の特別税率)というもので、一般に「同族会社の留保金課税」と呼ばれています。

 以前は全ての法人が対象となっていましたが、平成18年度改正で資本金1億円以下の法人は対象外とされましたので、現在は中小法人は基本的に無関係なものとなっています。

もし内部留保課税が始まったら防衛策はある?


 可能性は小さいと思われますが、万が一新たな内部留保への課税制度の話となれば、同族会社に限らず導入されるはずです。

 もしそうなると、課税を逃れようと考えるならば給与やボーナスなど経費を増やしたり、配当金を支給・増額したり、何らかの形で利益を減額あるいは留保金を吐き出す必要が出てきます。

 一方、課税の程度によっては、特に何もせず税金を払ってしまったほうが、配当等の支払を増やすよりも会社にお金が残るということも十分に考えられます。

 消費税の増税が財政の健全化につながらないことがほぼ確定している状況ですので、財源の一つとして議論される可能性があり、注視していく必要があるでしょう。

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