三越伊勢丹の「正月3が日休業断念」はなぜ残念な決断なのか?

 三越伊勢丹が正月3が日の休業を断念したという報道が話題になっています。生産労働人口が今後如実に减少していくことが予想される中、人件費も上昇しており、企業にとって人海戦術で利益を出す戦術は竹槍で戦闘機に立ち向かおうとするようなもの。国内の消費構造に起きている変化を直視し、変化に即したビジネスモデルを作れなければ、大手と言えど待っているのは衰退だけです。

三越伊勢丹が正月3が日の休業を断念と報道


 三越伊勢丹が「正月3が日の休業を断念する」と報道されています。

 最初は、いよいよそこまで業績が厳しくなったのか、と直感的に感じる程度でしたが、業績ハイライトを確認すると利益率は悪化しているものの、「正月に営業しないと赤字突入」ということではないようです。

節約社長
株式会社三越伊勢丹ホールディングス:業績ハイライト

 しかし、今期の業績見通しは直近の決算短信によると、営業利益で約25%減と相当厳しい状態ではあります。

 同じ100万円の売上をあげても、昔は最後に会社に2.5万円貯まったのが、2万円弱しか貯まらなくなっているということです。

節約社長
株式会社三越伊勢丹ホールディングス:平成30年3月期 第2四半期決算短信

正月営業の問題点は将来の利益に繋がる判断か?というところ


 そんな中、正月営業で売上も利益も確保したいところはあるのでしょうが、今回の施策では動員する人員問題が三越伊勢丹に重くのしかかります。

 正月3が日を営業するには人件費も相当かかります。おそらく売上は確保できても、大きな利益が確保出来るか?と考えると非常に厳しいのではないでしょうか。

 それに加え、今年は何とかやりきれたとして、毎年正月に社員を総動員して開店するという手を打つのは、今後ますます難しくなってくるでしょう。

 なぜか?理由は簡単です。旺盛に働いてくれる生産年齢人口が減少するからです。

節約社長
日本の将来推計人口:国立社会保障・人口問題研究所

 ファミレスも24時間営業を見直しをはじめていますし、いつでもお店が開いているという、我々にとっての当たり前が段々当たり前にならなくなっています。

 では、なぜあえて今回、苦境が目に見える正月の営業を会社のトップが選んだのか?

 経営者の仕事は本来、将来の利益を得るための施策を考え実行させることですが、今は目先の利益を求めなければならない、それだけ会社として打つ手の無い苦境に陥っているのでしょう。

社会構造の変化を直視し行動したものが次の時代を作る


 企業が人海戦術で利益を出しにくい環境になっているということはイコール、日本の内需マーケットが右肩下がりで縮小していることをも意味しています。

 これまでは増え続ける生産年齢人口が、まるで金太郎飴のように働きながら、20代で車を買い、30代でマイホームを買い、家族が増えると共に生活と余暇への消費を増やしてきたため、企業も人海戦術さえ取れば売上・利益を増やせたのです。

 しかし今や、既存の大手企業がどんなに手を尽くしても、今までのやり方では抜本的な対策とはならなくなっています。

 様々な業界で生き残りをかけた合掌連衡が進むでしょう。

 外資からの買収についても向こうから「興味がない」とお断りされることも多くなっています。外資の敵対的買収を恐れるような状況でももはやなくなりつつあります。

 では、日本にビジネスチャンスが無いか?個別の企業にとってチャンスが無いか?と言われるとそうではありません。

 これら国内の消費構造に起きている変化を直視し、5年後、10年後の将来を見据えたビジネスモデルを構築する企業が、今後エンパワーメントし、新たな時代を築き上げていくのではないでしょうか。(執筆者:大原達朗)

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