GEの1兆円赤字は見方を変えれば業績V字回復の要因であり、日本企業の未来指標である

 米ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)が去年10月から12月までの3か月間の決算を発表し、1兆円以上の赤字を計上することがわかりました。これだけ巨額の赤字を計上する事態に、もはやGEも終わりか…という声も聞こえます。しかし、事業承継の場面では損失を出し切ることがV字回復の要因となることがあります。金融事業については日本企業の先行指標となることもあり、GEの動きは要チェックです。

米GEが1兆円を超える赤字を計上すると報道


 米GEが四半期決算で1兆円以上の赤字を計上するということです。

 報道によると、電力事業不振などが背景にあるとあります。しかし、記事を読むと保健事業での資産評価減が原因とも記載されています。

 参考リンク:赤字1兆円超に 米GE 主力の電力事業不振など背景

 実際のところGEの内実はどうなのか、オリジナルの決算を見ながら考えてみましょう。

意図的かつ一時的な損失であればV字回復の可能性も


 まず、四半期のオリジナル決算ですが、PL(損益計算書)を引用しておくと以下のとおりとなります。

節約社長
GE ANNOUNCES FOURTH QUARTER 2017 RESULTS

 ここで1兆円損失の原因をGEは、“Investment contracts, insurance losses andinsurance annuity benefits”としています。

 これは保険、年金事業の投資損失でしょう。もちろんその他の事業も悪化しています。

 また、別の決算発表プレスリリースでは、更に詳しく保険事業の説明がありました。

 P.10に以下の記載があります。

Ongoing actions to make GE Capital smaller and more focused … retaining capability to support Industrial business

− EFS impairments after-tax $1.8B related to goodwill & shortened hold period assumptions
 金融事業を縮小し、180億ドル相当の減損はのれんと保有期間短縮による、損失に関連するものだとあります。

 要するに長いことかけてきた金融機関の縮小について継続して手を売っており、しかしここでその金融事業について、保有資産の保有期間短縮などの原因があり、一気に評価損、減損を計上することになったということです。

 日本でもこのような現象は、事業承継の場面で先代の残した膿(不採算部門)を、一気に特損として出し切る場面でよく見られます。

 いわゆる第二の創業場面です。

 これが意図的かつ一次的なものであれば、GEにとって今回の損失計上はV字回復の要因となるでしょう。

金融の収益構造が変わる今、GEの動きは日本企業の先行指標になる


 GEはいち早く金融事業からの脱却を提唱していましたが、なかなか完全には撤退できていないようです。

 金融事業は顧客もたくさんいますから、引受け手がなければそうそう撤退もできません。

 少し心配なのは、これだけGEが金融事業のリストラに苦労しているのに、日本企業の製造、流通大手の多くはまだまだ金融業で稼いでいることです。

 たとえば、イオン、ソニー、セブン&アイがこれにあたります。

 海外では既にフィンテックが金融の収益構造を大幅に変え、これに合わせてGEなども全てをかなぐり捨てて、撤退しているわけです。

 遅からず日本にも同じことが起こり得るのは容易に想像がつき、先行指標としてGEの動きには留意しておく必要があります。

Photo credit: dok1 on Visualhunt.com / CC BY(執筆者:大原達朗)

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