会社を買う・店を買う、幾らでどんな案件を狙ったら良い?顧客層とLTVがキモ

 起業する際や、新規事業を始める場合、業種や業態によっては自分でゼロから始めるより、既にある会社やお店を買ったほうが早い場合があります。もし会社やお店を買うならば、買収の対象先についてチェックすべきこととは?買収金額の算定方法は?玄人はどんなふうに買収を決めるのかキミアキ先生がわかりやすく解説してくださいます。

自分で新たに始めるより事業を買ったほうが早い場合がある


 今日は会社を買う、店を買うというテーマでお話したいと思います。

 たまたま、私の中学1年生の息子が簿記検定1級の勉強をしておりまして、今日やったのが「企業買収」の分野でした。

 高く買うと「のれん代」とか出てくるとか、そういうのをやっていたんです。

 うちの息子には夢がありまして、明治のスーパーカップっていうアイスクリームが大好きなんです、ですからまずは明治を買収すると。

 それからキリンの午後ティー『午後の紅茶』のミルクティーが大好きなんですけど、これも”大好きだから”ということで、キリングループも買うと(笑)。

 「実際さ〜その金をどうやって調達するんだ?」って聞いたら、「え?だってもっとデッカイ会社になってさ〜、それから明治のみ込んで〜、キリンものみ込んじゃえばいいじゃんっ」みたいな感じで、簡単に言ってましたけれどね(笑)。

 そんなこんなで、中小企業も新たに自分で何かして商売を起こすよりも、会社を買ったり、店を買ったりした方が早い場合もありますので、それについてお話していきますね。

素人は「箱」を高額で買ってしまう傾向あり


 世の中で売られているボロ会社っていうのがあるんですけれど、ボロ会社ってメチャクチャ安いんですよ。

 ですから、例えば「高いなって」思うのは、大体”免許持ち”ですね。

 免許と言ってもですね〜…実際の売買が行われているのは、不動産業ですね。いわゆる宅建業です。

 宅建業の免許をもっていると、宅建業の免許っていうのは 大体200万円以上かかりますから、大体200万円くらいの値段では売買されています。

 あとは社歴が古い、10年以上の社歴があるとかね。

 それから資本金が大きいっていうこと。自分ではあまり資本金が用意できないんだけれど資本金が大きい会社ってあるわけですよ、資本金5千万円とかですね。

 資本金というのは必ず登記簿に載ります。それから社歴も載ります。

 ですから資本金の大きい会社を持ちたい!でも自分は資本金がないから資本金が大きい会社を、手持ちの小さなお金で買っちゃおうかなとかね。

 あるいは会社がフランチャイジーに加入していたりすると、フランチャイジーの権利が有りますので、そういう感じで何かしらちょこちょこ値段がつくんですけれど、所詮が会社という箱にすぎません。

 これ箱なんですよ。ですから素人以外はこういうものを買ったりはしません。

玄人は「事業体」「顧客」を見て会社や店を買う


 素人以外はどういうふうにするのかというと、結局「事業体」を買うんですね。

 ちゃんとそこでお金が動いているのかっていうことなんです。要は「顧客」が欲しいんですよ。

 顧客であり、取引先が欲しいんですね。

 そして「LTV」ライフタイムバリューと言う考え方がありますが、要するに「顧客生涯価値」を考えると、ここの顧客を買い取れるんだったら、これくらいのお金を出しても良いやっていうね、これが出来ている会社は意外と高い値段でやりとりされます。

 会計事務所も実はよくM&Aというものがありまして、大体M&Aの対象となりますのが粗利益…まぁ会計事務所はほとんど売上高=粗利益なんですが5千万円以上になってくるとその売買の対象になってくるんですよ。

 なぜかというと、会計事務所の商売柄、取引先はまず分散されているし、その会社が潰れるまでその顧問料・決算料を頂けるとか、非常にライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が大きいものですから売買の対象にされるんですね。

買収金額の計算は銀行融資との比較で意外と簡単に計算できる


 次は値段についてです。

 会社の売買の値段、それから店の売買の値段、本っ当にね〜 一物一価です。これをね〜計算するのが楽しいんですよっ!

 粗利益 × ◯◯とか◯年とかやったりとか、あとは経常利益で考えたり。

 それから社長が、自分は早めに引退したいんだけど〜っていう場合は、役員報酬×3年という場合もありますね。

 お店だったら、「正直言うと店に2500万円ぶっこんだんだけど、もう1千万円しか回収できない(泣)だから残り1千5百万円をくれるんだったら、すぐ譲るから」っていう感じでね、計算をしていったりするんですね。

 ところが実際、買う側からするとね、正直言うともう設備とかね〜ホントのとこは要らないんですよ。

 欲しいのは顧客だけ。基本的に顧客です。顧客だけ欲しくて、くっついてくる従業員とか正直要らないことが多いんです。

 そこで買う側の理屈からすると、その顧客を買って、じゃあ銀行がいくら金を貸してくれるのかとか、そこまで計算するんですよ。

 買い取りの値段より融資が下りる金額の方が大きかったら、大体は思い切って買っちゃいます。

 こうやって買収金額の計算方法というのは、実は意外と単純なんです。

 みなさんも実際に自分が買う側・売る側になってみて、一物一価ですからどんな高い値段もつくしどんな安い値段もつく。

 それは実際に事業として動いていると高い値段が付くんであって、会社という”箱”にはほとんど値段がつかないっていうことを知っておくだけでも良いと思います。


 
(執筆者:タナカキミアキ)

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