シェアハウス投資の破綻騙された高額所得者が投資前にすべきだった質問

 4月初旬に、女性専用シェアハウスを運営するスマートデイズが東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。今回のトラブルにおける特色は、シェアハウスへの投資家(被害者)の中心層が、高額所得者だったことにあります。なぜ、金融リテラシーがありそうな人々が、今回のトラブルに巻き込まれたのか?彼らが投資前にすべきだった質問も踏まえ、一連のトラブルを振り返ります。

シェアハウスのスマートデイズが民事再生へ


 4月9日、女性専用シェアハウスを運営するスマートデイズが東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。

 負債総額は約60億円。

 同社の運営する「かぼちゃの馬車」は、投資家が「利回り8−10%で30年保証」という触れ込みの下で集められ、スルガ銀行から融資を受けて物件オーナーとなる仕組みが作られていました。

 ただ、この仕組には欠陥があり、以下のように瓦解していきます。
  • 1)スマートデイズがスルガ銀行を使い、投資家に融資を組んでもらう
  • 2)スマートデイズは提携業者を使い、投資家にシェアハウスを建築し、建築会社からキックバックで数十%の手数料をとる
  • 3)スマートデイズが投資家のシェアハウスを一括で借り上げ、貸出をする
  • 4)予定どおりの貸し出しができず、投資家にリース料を支払えない
  • 5)投資家が銀行へ返済できなくなる。
  • 6)リース料を支払えないスマートデイズが民事再生法を申請。投資家は阿鼻叫喚。

なぜ高額所得者が騙されたのか?投資前にすべきだった質問


 今回のトラブルにおける特色は、投資家(物件オーナー)の中心層が、高額所得者だったことです。

 医者であったり、上場企業のサラリーマンであったり、経営者の立場にある人、つまり富裕層の人々が今回のシェアハウス投資を実行しました。

 なぜ、金融リテラシーがありそうな人々が、今回のトラブルに巻き込まれたのでしょうか?

 というのも、ゼロ金利の時代にスマートデイズは「利回り8−10%で30年保証」という触れ込みで投資家を集めていました。

 これができる・できないの証明は実際には難しく、「ないとは言い切れないだろう」という理解をしてしまう可能性はあります。

 そこで考えるべきは、「こんなよい商品があるなら、販売者はなぜ自分で投資しないのだろうか?」という質問です。

 それさえ思い浮かべば、この問題は解決するはずです。

 ところが、この素朴な質問ができるかどうかで言うと、お金を持っている人ほど周囲には質問できない傾向があります。

  心のどこかでは何かが引っかかっている。けれど、自分の社会的な立場上、周囲にも相談しにくい。質問したら周囲はどう感じるだろうか?そもそも自分はこれまでも上手くやってきたはずだ。

 こうして思考の迷路に迷い込むうちに、「なぜ自分で投資しないのだろうか?」という質問すら忘れてしまい、その後は自分にとって様々な条件を都合良く考えるようになってしまいます。

 こうして、社会的地位の高い方がコロッと騙されてしまいます。

 金融機関や行政もその素朴な質問ができたのか?と言うと疑問です。

投資の際は自ら調べ、プライドを捨て質問する


 いわゆるねずみ講的なビジネスは、机上では成り立つようになっています。

 しかし、実がないものを知人に買ってもらうことも多く、そこで多くの信用を売ることになってしまいます。要するに誰かを騙している可能性が高いわけです。

 対して今回は、条件はねずみ講に近いにも関わらず、銀行がバックについたサブリースの仕組みが、高額所得者をターゲットとしたものであったため、騙される側も上記のような思考の下、安心しきってしまったところがあります。

 自ら仕組みを調べ、プライドを捨て、「こんなよい商品があるなら、販売者はなぜ自分で投資しないのだろうか?」と質問すべきでした。

 私の専門とするM&A領域も同じで、専門家の言うことをただ聞いているだけでは不十分です。なぜそんなことが必要なのか、あるいはこういう方法はないか、という質問を自ら行う必要があります。

 自分で質問する、素朴な質問でも大丈夫です。「投資は自己責任である」という原則を踏まえ、あらためてこの姿勢を大切にしていきましょう。(執筆者:大原達朗)

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