大塚家具に残された2つの資金調達手段〜借入と増資のメリット・デメリット

 大塚家具の資金調達問題が報道紙面をにぎわせています。中小企業では、社長が自分のお金を入れることで当座をしのぐ方法がよくとられます。ただし、大塚家具のような大きな企業では、必要な資金も莫大です。借入と増資が具体的な手段として考えられますが、それぞれにどんなメリット・デメリットがあるのか解説いたします。

大塚家具の報道は「身売り」の話題が先行しているが問題は「資金調達」


 大塚家具が身売りするのでは、という報道が紙面をにぎわせています。

 身売りという表現ですと、会社そのものを売ってしまうかのような印象ですが、記事の内容としては業績不振による資金繰りの悪化で、会社として資金調達をどのように行うか問題となっているようです。

 資金繰りが悪化した時に、その状態を放っておいては会社はすぐ倒産してしまいますので、何らかの手を打たなくてはなりません。

 中小企業では、社長が自分のお金を入れることで当座をしのぐ方法がよくとられます。

 ただし、大塚家具のような大きな企業では、必要な資金も莫大ですので、なかなか社長個人のお金だけで賄えるようなものではありません。

 大塚家具の資金調達には、どんな選択肢があるのでしょうか?

大塚家具2つの資金調達の手段〜借入と増資


 現実的に最も多く取られる方法は金融機関からの借入です。

 大塚家具は6月に数億円単位で20年ぶりの借入を起こし、7月にはその借入を返済しています。これはおそらく短資だったのでしょう。

 ですが、「銀行は晴れた日に傘を無理やり貸そうとして、雨の日には傘を取り上げる」と揶揄されるように、業績の良い会社にはすんなり貸しても、業績の悪化した会社への審査は徐々に厳しくなります。

 もちろん、銀行としても貸し倒れになってしまってはいけませんので、返済余力や業績の回復可能性など含めて、慎重に審査するのは当然のことです。

 大塚家具の業績が月単位でプラスに転換しなければ、銀行もお金を段々と貸付しない方向で動くことでしょう。

 また、借入では元本+利息を支払う必要があります。業績が回復しなければ更に資金繰りが悪化してしまうことになります。

 資金繰りという面で一番有用な資金調達方法は増資です。

 一般的に「身売り」と呼ばれるのはこの増資による資金調達です。資本金として調達すれば返済義務がないため、借入のように返済期日などを気にせず事業に資金を投下できます。

 今回の報道では、TKP、ヨドバシカメラなどの企業が、その対象として上がっています。

増資のデメリットは「時間がかかること」と「経営権の問題」


 ただし、増資には様々なデメリットがあります。

 まず、増資のデメリットの1つ目は時間がかかることです。

 通常は第三者割当という方法をとりますが、相手先を見つけて金額の交渉をし、合意が取れたら、お互いの社内手続きを経てようやく増資の実行となります。

 金額や状況次第では株主総会の開催も必要になります。

 次に経営権の問題がデメリットとして生じます。

 株主になれば株主総会での発言権もあり、持株割合が一定数を超えれば経営を左右できる権限を持ちます。

 社長以下、役員を全員代えられてしまう恐れもあります。そのため出資割合を一定以下に抑える、あるいは議決権を制限した株式を発行する、といった手法がとられる場合もあります。

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