中小企業に粉飾決算がはびこるのはなぜか?粉飾決算が今後しにくくなる理由

 多くの中小企業が粉飾決算に手を染めています。にも関わらず、これらの企業は自分たちのやっていることに対して、「生き残るためには仕方がないこと」「みんなやっている」というくらいにしか考えていません。しかし、実態と異なる数値を提示し、融資を受けたり、許認可を維持したい、入札に参加するのは詐欺です。粉飾決算がはびこる理由とこれらの企業に待つ運命について考えます。

中小企業に粉飾決算がはびこるのはなぜか?


 いわゆる中小企業では、粉飾決算をしているケースが日常茶飯事にみられます。理由はだいたい、融資を継続するため、許認可維持のため、官公庁物件の入札で勝つためといったものです。

 ただ、単刀直入にいえば、実態と異なる数値を提示し、融資を受けたり、許認可を維持したり、入札に参加するのは詐欺です。

 にもかかわらず、粉飾決算をしている方の多くは、「生き残るためには仕方がないこと」「みんなやっている」と考えています。

 なぜ、このような価値観がまかり通っているのかと言えば、過去はそうはいっても、企業と金融機関の間でお互いに粉飾決算を見て見ぬふりをする、なあなあな関係が続いてきたからです。

粉飾決算が今後しにくくなるのは自明の理


 しかし、金融機関もご存知のとおり、低金利の影響で合掌連衡を余儀なくされています。本当は赤字であることをわかっていて、融資をなあなあな関係で続けることの限界も近づいています。

 さらにこのネット社会、会計事務所の責任も重大です。あの事務所は顧客の粉飾決算を手伝って、融資を引き出しているという情報がネットに流出したとしたら、どうなりますでしょうか。それが事実であれば、その会計事務所はもう終わりでしょう。

 考えてみると、当たり前のことをなんとなく誤魔化しても、それで済んできた理由は1つだけ。日本経済界が成長し続けていたからです。

 多少数字を誤魔化しても翌年取り返せばよいと考え、多くの企業は数年でそれを取り返せたのです。

 しかし、そんな成長経済も終焉を迎えて久しい今、この論理は通用しません。

 もし今、粉飾決算に手を染めようとする考えがよぎっているなら、すぐに考えを改めてください。当座は良くとも待っているのは全ての信用を失う未来だけです。

粉飾決算している企業が良い事業譲渡を遂げることは不可能


 たとえば私の専門分野であるM&Aの世界でも、粉飾決算している企業によるM&Aが成功する確率は低いと言わざるを得ません。

 まず、買い手が粉飾決算をしている会社を買いたがるでしょうか?たしかにリスクテイカーであれば検討はするかもしれません。

 しかし、粉飾決算をしている企業の経営者は、会計事務所や担当者にその処理を丸投げし、正確な実態を把握できていないことがほとんどです。悪い部分には目をつぶってしまっています。

 売却の交渉が進む中で、当初は聞いていなかった粉飾内容が判明することも現場では多く、この場合はもちろん、交渉が途中で決裂します。

 自分の会社を売りたい方は、粉飾は詐欺であることを明確に意識をしてください。そして、時間をかけてそれを修正すべきです。

 その時間がなければ、タダでもよいから引き取ってほしい、という覚悟を決めることでしょう。その場合にはもちろん、会社の負債は引き継げませんので、ご自身で責任をもって返済を続けていく必要があります。(執筆者:大原達朗)

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